ペンシルバニア大学＆ピッツバーグ大学電子図書館　竹取物語

http://etext.lib.virginia.edu/japanese/taketori/AnoTake.html

なぜアメリカにこんな詳細なものがあるのか不思議だ。不思議といえば昔の人はいろいろなことを文献にしたり口伝えにしたりして残してくれている。とても親切でこれも不思議だ。

最近インターネットを検索していてひょんなことから上記URLの竹取物語を読んでいるのだが、つくづくこの話はおかしな話だなぁと思う。

確か、中学か高校の国語の時間に全文暗記させられたっけなぁ。今じゃ全部忘れてるけれど。

昔は宇宙人『かぐやひめ』が凡人竹取じいさんの家に転がり込んだのだと普通に思っていた。しかし今読み返してみると、この竹取の爺さんも少々変だ。

最初にかぐや姫を保護した年齢が70歳で、かぐや姫と別れるときには50歳になっている。

自分の目で確認できない以上、かぐや姫だけが変な人だったという断定はできない。爺さんは若返る人種かも知れない。そういえば芥川龍之介の『河童』で最後に会った河童が生まれたときは老人でだんだん若返っていくんだったっけ。

また、かぐや姫の求婚者がしつこくこの爺さんにせっついた挙句、爺さんが出した結論は

變化の人といふとも、女の身持ち給へり。翁のあらむ限りは、斯うてもいますかりなむかし。この人々の年月を經て、斯うのみいましつゝ宣ふ事を思ひ定めて、一人々々に婚ひ奉り給ひね



変態する人といっても、女の格好をしているから結婚してみたらどうか。

爆弾発言のような気がする。

まあ向こうが結婚したいって言っていってるんだから問題になんないかもしれないけれど、なんか変じゃないか。

それに対するかぐや姫の回答は

よくもあらぬ容貌を、深き心も知らで、徒心つきなば、後悔しき事もあるべきをと思ふばかりなり。世の畏き人なりとも、深き志を知らでは婚ひ難しとなむ思ふ

と、まだ冷静な判断だ。

それにしてもかぐや姫は死人だったのだろうか。

仙人になる薬を飲むとミイラのようなものになるようなのだ。

自由に宙を飛び歳を取らなくなる。しかし口をあけると死んでしまう。

「さきざきも申さむと思ひしかども、必ず心惑はし給はむものぞと思ひて、今まで過し侍りつるなり。さのみやはとて、打出で侍りぬるぞ。己が身は、この國の人にもあらず、月の都の人なり。それを昔の契りありけるによりてなむ、この世界にはまうで來たりける。今は歸るべきになりにければ、この月の望に、かの本の國より迎に人々まうで來むず。さらず罷りぬべければ、思し歎かむが悲しきことを、この春より思ひ歎き侍るなり」



最初に

翁いふやう、「われ朝夕毎に見る竹の中に、おはするにて知りぬ。子になり給ふべき人なめり」とて、手に打入れて家に持ちて來ぬ。

といって、異常な状態なのに自分の子供になるべき人だと思い込む辺り、以前死んだ自分の子があって似ていたのだろうか。

死はどんなに扉を閉めても防ぐことができない。

翁、「こはなでふ事を宣ふぞ。竹の中より見つけ聞えたりしかど、菜種の大さおはせしを、我が丈立ち竝ぶまで養ひ奉りたる我が子を、何人か迎へ聞えむ。まさに許さむや」といひて、「我こそ死なめ」とて、泣きのゝしることいと堪へ難げなり。

8月15日といえば死んだ人が還ってくる日だ。



また最後に不老不死の薬が突如出てくる。

不老不死の薬は月にいるウサギが杵で搗いて作る仙薬で、その昔10個あった太陽が全部いっぺんに昇って旱魃が起きたときにゲイという人が太陽に矢を放って9個射落としたところ、3本足のカラスが落ちてきて太陽が一個になり、危機を救ったというので、ウサギの主人が褒美に渡した薬だ。

その薬はゲイの奥さんのジョウガが勝手に2人分飲んで月に昇って行ったが、副作用でカエルの格好になった。取り残されたゲイは嘆き悲しむが8月15日に月を模した月餅ゲッペイを月にかざすと還って来るという話を人から聞いてその通り餅を作って月にかざしたところもとの姿でジョウガが還ってきたという話があるらしい。そこから中国では8月15日に月餅をお供えする習慣ができたらしいのだが、でも真似するとジョウガがもれなく還ってくるような気がする。なぜ人の奥さんを呼び戻さなければならないのか。

金烏とは太陽のことで、玉兎は月のことをいうらしい。

ところが金烏玉兎というと日月、永遠ということになるらしい。また金烏玉兎集といえば陰陽道の秘伝書の名前だ。

竹取物語はとっても奇妙な話だけれど、案外何かの真実が紛れ込んでいるのかもしれない。昔の人はとっても親切で何かを後の世に伝えようとしたのだ。そう思うとちょっとロマンチック。